笠ヶ岳(2,897.5m)・双六川打込谷遡行
日程:1999年8月5日〜8月7日
メンバー:OS(CL)・HT(SL)・ET・RH(一般)
          


日目;
 今回の上宝村にある打込谷の遡行は、昨年試みたが当日は予想外の増水で、勇気ある(?)撤退をしての再度の決行ということで、これに同行を許される。その幸運と感謝と喜びを持って参加する。
 県庁駐車場でH氏のパジェロに同乗、東海北陸自動車道で八幡町へ。せせらぎ街道では夜明けをむかえながら、そしてちょっぴり雲のおおさを気にしながら高山市へ入る。国道41号から国府町で県道76号、十三墓峠を越えて国道471号、ほどなく駒止橋で大規模林道、そして金木戸林道へと進む。
 その間、私を除く3氏の交代運転で快調な走りである。右手の川面をみて昨年との比較が話題となる。上流にダムがあるものの、今年の水量の方が少ないという。 やがて車は第二ゲート前着。駐車よし。身支度をして予定より30分早い出発となる。
 空がわずかに青味がかかった部分があるも、中層雲が一面で涼やかな大気のなかの林道歩きである。素堀りのトンネルをいくつもくぐって最初の水場である。左手からの流れに出会う(8:40)。喉を潤し顔を洗って先を進む。北ノ俣岳と広河原の分岐を右にとってやがてダム(9:30)を過ぎ広河原に着く。ここからは旧トロッコ軌道の細い荒れた道となる。 いつもながらトップのH氏は膝に弱点を持つといいながら、歩きが速い。あたりの様子を見る余裕もなくついていく。やがて左手から落ちてくる滝の中段に当たる水場で小憩(10:30)。さらに進んで踏跡状になった山道が判然としなくなったころに橋が見える。金木戸川の河原に下りる。川は結構な水量で、驚いたことに、川岸にも川の中程にも巨岩が不規則に立ち並び、増水時の水量と巨岩を押し流す巨大な水量の力を十分に想像させられるものであった。巨岩の間で薄曇りの日射しを受けながら昼食をとる(12:00)。 いよいよ遡行開始である。まず金木戸川の横断渡渉から始まる。巨岩をよじ登ったり、下ったり、腰まで水につかったりしながら、打込谷出合に着く(12:30)。 きれいな水流である。遡行につれて現れる滝はへつりと高巻きとひと泳ぎで通過し、仙ノ淵に至る(15:00)。大岩の前は少し広がりのある河原で川向いは白い小滝が落ちている。数少ないキャンプ適地と思われ、今日の遡行はここまでとなる。
 一息入れてO氏は焚き木を集め、H氏とE氏は寝所の地ならしとタープ張りに精を出す。私はO氏の要望もあって夕食のおかずにと岩魚釣りに挑んだが、えさを川虫にしても、林道歩き中に捕まえてきたミミズにしても、さっぱり当たりなし。川のポイントもいくつか移ってみたが、まったく魚影もなければ当たりもなし。内心はアマゴも釣れるかと期待していたのにガッカリだった。O氏が熟した黒マメの木の実を枝ごと持ってくる。ブルーベリーに似ているがもっと甘くてうまい。焚き火のほとりで夕食と語らい、E氏は行動中寝不足から、時々「眠い」とこぼしていたが、早々に寝つく。ほどなく全員、川音を枕辺に後を追う。


日目;
 今日も空は中層雲でスカッと晴れそうにないなかを出発。ほどなく青く澄んだ何ともいえないきれいな水をたたえた大きな釜を持つ滝に出る。右岸を高巻き滝の落ち口(8:20)。ついで逆S字状に曲がったナメ滝(9:00)である。なるほど核心部だ。明るく変化に富んだこのあたりの沢筋は素晴らしい。二又(9:15)を右にとって、やがて北西尾根の稜線見る(10:40)。次々に現れるナメ滝は靴底のフリクションを利かせて快適に登る。もっとも私は地下足袋にワラジかけではある。これまた快調なり。 水流が細くなる中を登って平らで大きな岩盤のある滝下の二股に至る(12:40)。振り返れば黒部吾郎岳がせり上がってきている。晴れて日の射す中を、右に更につめて、水流がぐっと少なくなったところで左手の台地状の所へ出る。標高2,300mほどの緩斜面の草地である(13:30)。 今日はここでキャンプをする。
 ザックを降ろすとあとは黒部吾郎岳を正面に見据えて、打込谷遡行の成功の意味も含めて酒を酌み交わし、とてもいい気分、まさに至福の時間を過ごす。 ツェルトを張って一息入れた頃に小雨がきたが、わずかで上がる。南西の空に我々を祝福するかのように、鮮やかな虹が立つ。E氏は、「紫外線から赤外線まで見るほどだ。」という。見事である。
 虫除けのためにもと、おおきな岩盤上で焚き火をする。焚き木がよく乾燥していて、適度の風ありでよく燃える。 夕食と談話はゆったりと、暗闇の迫る頃まで楽しむ。

3日目;
 流れに出て少し登り、源流部で水を飲み、洗顔を済ませて岩場を登りきり、チングルマ、ミヤマリンドウ、ウサギギク、ヨツバシオガマ、ミヤマアキノキリンソウなどが咲いていたお花畑のザレをつめて北西尾根に出る。あとは踏み後をたどって、ほとんど這松こぎなしで、小笠の頂に立つ。空はすっかり晴れ渡り、まさに360度の大展望を楽しむ。とりわけ槍ヶ岳から穂高連峰が一目のなかに入り切るところがよい。 眼下の笠ヶ岳山荘に向って降りる。山荘は昨年新築されたもので玄関に入ると広々としており、公衆電話BOXも設置されており、どこも当然新しく立派なものである。
 ザックを降ろすと元気充実のE氏はテント場下の水場へ水汲みに、続いてO氏も出かける。しかし水場が小さく発見に手間取ったそうで、O氏は幡流隆平まで下って引き返すことになったとか。ご苦労様でした。

  (一般参加;房野記 )