南駒ヶ岳(2841m)から空木岳(2863.7m)縦走
(山域:中央アルプス)

山行目的:擂鉢窪に泊まりたい
山行期間:
2005/07/10(日)〜7/11(月)
メンバー:CL H.T、SL S.T(食糧.会計)、T.K(記録)
コースタイム:
7/10

棚橋宅(4:00)→羽島IC→中津川IC→大島→伊奈川ダム先P(7:10)
−今朝沢林道分岐(7:50)―ニワトリ小屋登山口(8:20)―北沢尾根2,411mピーク (12:00)ー 南駒ヶ岳(15:00)―擂鉢窪避難小屋(16:00)

7/11
擂鉢窪避難小屋(6:00)―赤なぎ岳(6:40)―空木岳(7::50)―木曽殿山荘(9:00)
―六合目の丸木橋(11:50)―ウサギ平(12:40)―伊奈川ダム先P(14:00)→恋路の湯→中津川IC→羽島IC→棚橋宅(17:00)
概念図

一日目

 終盤に差し掛かった梅雨時の晴れ間を期待して、心配な天気だが予定通りとの連絡で、気持ちを切り替えての参加。当日、雨は上がり、未明に出発。途中、恵那サービスエリアで朝食をとる。天気予報を見ながら済ませるが、ゆっくりしすぎてリーダーに注意を受ける。中津川インターからR19に入り、「伊那川橋」手前で右折。しばらく行くと伊那川ダム先の今朝沢林道手前の駐車場に止める。数台車の先客がある。二箇所で30台は駐車可能。その一台の車の中から釣り師ご夫婦が現れ、全部、釣り師の車とのこと。雨が降り始め、雨具をつける。
ゲートを通るとすぐに、左「空木岳」と右「南駒ヶ岳8.5km、越百岳6.5km」の分岐がある。先ほどのご夫婦は空木方面へと消えていく。いよいよ標高差1700mの南駒ヶ岳目指して、長い緩やかな登りの林道歩きが始まる。若い釣り師二人とすれ違う。下山後に思ったのだが、この山行中に会って言葉を交わしたのは、この釣り師4人だけだった。まだ、この頃は、歩調は皆同じ。「ニワトリ小屋四合目登山口」最後の水場なので、花崗岩の「今朝沢」に下りて共同装備の水2Lを汲む。雨は降ったり止んだりの中、真新しく設置された鉄の階段を登る。うっそうとした樹林帯の急登をしいれられ、しだいにリーダーから遅れる。10m先はガスっていて視界が利かない。ポイントでは地形図片手のリーダーが、まるで仙人のような出で立ちで待っていて下さる。思わず「休憩ですか?」の連発。「まだ、30分しかたっていないだろう。」時計も見ていないリーダー。確認すると、本当に30分です。やっぱり仙人です。Sさんの、「そんな事言わんと休ましてよ!」の声も届かず、一時間に一本の短い休憩は最後まで続く。足元は、ゴゼンタチバナ、ツマトリソウ、ハクサンシャクナゲなどのお花に、途切れることなく癒される。
 植生が、がらりと変わると「標高1850mの見晴台」に到着。展望なし。延々と続く辛い登りは続く。「標高2411mの北沢尾根」に到着。もうこの頃になると、汗と雨で、びしょ濡れである。しばらく緩やかな登りと南に「小さいナギ」を過ぎると、「標高2591mのピーク」今までの疲労も忘れるくらいのお花畑です。ハクサンチドリ、コバイケイソウなどデジカメに納まる。長居をすると寒いので、短い昼食を取る。稜線のお花のプロムナードを楽しむと、「標高2712mピーク」に到着。ここまでは、「遅いぞ!遅いぞ!」の連発ながらも、まあまあのコースタイム。
「南駒ヶ岳まで45分」の標識を見て、女性陣は励ましあう。ハイマツ帯を足元に男性的な巨岩を、ルートファインデングの指示あり。慎重に登る。御在所の前尾根のようだ。一箇所のクサリ場がある。余りのえらさに何回ここを登れば山頂だと思ったことか。やっと辿り着いた山頂「南駒ヶ岳」。天気だったら南アルプスが見えるだろう。
 稜線を北に方向を変え進む。上昇気流や突風がきつく。振られないように慎重してコルまですすむ。南東方向に小屋を目指す。後15分の標識がある。カール状の、石がゴロゴロした登山道を下ると、足元はショウジョウバカマ、ハクサンイチゲ、ミヤマキンポウゲ、ミヤマダイコンソウなど、春から夏にかけての高山植物でいっぱい。だが、ザックの重みが肩に食い込み、長時間の歩行と全身、靴の中までびしょ濡れは、疲労度も限界に近い女性陣。沢音は聞こえるが、10m先の視界か聞かないのと、リーダーこと仙人の姿はもちろん、声も聞こえなくなる。小屋かと思ったら大きな岩だったり、もうとっくに15分は経過しているのに、と不安が増すばかり。大きな声を上げるが届かず、購入して二回目の「笛」を吹く。一瞬、遭難する時の気持ちは、こんなのだろうと思う。応答あり。リーダーの声を聞きほっとする。それからすぐ、登山道終点の真新しい「摺鉢窪避難小屋」に無事到着。うれしいことに私たちだけの貸切り状態。一宿一飯の恩義が使用料1000円とは感謝し、ポストに入れる。着替えと食事を済ませた後、外は晴れ上がり、鎮座する南駒ヶ岳、そこから広がるカールは、天空の花園。ミヤマクロユリ、ヨツバシオガマ、フーロ、ナナカマドなど数多くの種類のお花が辺り一面に広がっている。小屋前の「百間ナギ」は大ナギといって、怖いような崩れ方。いずれ小屋も飲み込まれそうな雰囲気だ。眼下は、この小屋を管理している飯島町の町並みが見える。水場はないとの情報だったが、雪渓の雪解け水なのか、伏流水として勢いよく流れている。携帯が通じて感激する。


二日目

 一晩中強い風だったが穏やかな曇り空。分岐までは来た道を戻る。意外と短く、コルまで登る。疲労度と視界が利かないのとで、行程の長短があることを体験する。北に向かって、強い風の中、岩稜を歩く。イワヒゲ、コマウスユキソウなど、お花は途切れない。「赤なぎ岳」に到着。遥か眼下に「木曽殿山荘」が小さく見える。
 砂混じりの道を登る。岩の傍らに昭和53年6月に25歳の単独の遭難碑がある。花崗岩が立ち並ぶ「空木岳」山頂。アルペン的な岩場をクライムダウンの指示にて慎重に下山。数箇所のクサリ場がある。「2782m」のピークに到着。ここからも、一気に高度を下げて「木曽殿山荘」に到着。人気がない。ここまでは、コースタイム通り。
 西の方向へ5分も歩くと、「木曽義仲の力水」に着く。うっそうとした樹林帯の中、昨日の雨で足元が滑りやすく、ここから、どんどん遅れる。南面の尾根を下ると「見晴台」に到着。どっしりと南駒ヶ岳が見える。しばらくして、珍しい背丈10cm程のイチヨウランが目に入り感激する。一箇所、踏み後がわからなくなり、登り返して軌道修正する。「八合目」を過ぎ、「仙人の泉」で喉を潤す。
それが効いたのか、ここら辺りから今までの遅れを取り戻す。「六合目」に到着。東川の沢音をリズムにつっぱしる。増水時は怖いような「吊り橋」を渡る。尾根からはずれトラバース、崩落箇所を過ぎると、やっと「ウサギ平」。リーダーが三年前にここから登られた時は、廃車のバスが放置されていたとのことだが、今はなかった。
 ショートカットできる登山道は廃道になっている。その廃道の登山口に、昔は利用された避難小屋がある。しかたなく、駐車場まで7.4kmの林道歩きをしいられる。遅れを取り戻す為、必死で着いて行く。伊奈川左岸の林道を水の流れと、小動物のさえずりと、足音だけが響く。

 今回、健脚なご夫婦のメンバーの一人に入れて頂き、大変ご迷惑をお掛けしましたが、とても感謝しています。このルートは、登山道に不明瞭な箇所があり、熟達者向きの難路と記されています。まるで行者の如く、叱咤激励され、登り2時間、下り40分の遅れだったが、無事、全行程を歩けたことを糧として、次につなげたいと思います。「ジャーナリスト本多勝一がこよなく愛した擂鉢窪避難小屋」に宿泊するというリーダーの思いが叶いました。まわりに他に人がいない、空に広がるようなお花畑の擂鉢窪を散策した、夢のような時を、もう一度体験したいです。本当に有難うございました。

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