白馬岳周辺山岳ツアー(北アルプス後立山連峰)

1997年5月1日~5月3日(前夜発2泊3日)

記録

メンバー

萩Nケンちゃん、オーロラ輝子、安D、F墳

コースタイム

5/1

5/3
5/1:栂池高原3:30/6:10=猿倉6:40/7:10-白馬尻8:30/8:50-白馬山荘15:30/16:00-白馬岳16:20/16:30-白馬山荘16:50(距離/7km、高度差/登り
1702m,下り92m)
5/2:白馬山荘7:20‐柳又谷カール‐ー鉢ノ鞍部8:10/8:20-雪倉避難小屋9:20/9:55-雪倉岳10:40/11:00-滝ノ沢-瀬戸川12:15/12:40-滝見尾根 
   13:00/13:10‐兵馬ノ平13:20/13:30-蓮華温泉14:25(距離/12km、高度差/登り546m,下り1911m)
5/3:蓮華温泉7:20-弥兵衛橋‐ヤッホー平8:25/8:45-白池10:40/1055-杉ノ平11:30/11:45-木地屋12:15/13:00=栂池高原13:30/14:00=大垣20:00
(距離/14km、高度差/登り110m,下り950m)

現地の状況及び感想その他

【コース概要】

  • 白馬岳から雪倉越で蓮華温泉へ滑降するコースは、山スキーを志す者であればだれでもが憧れる第一級の高峻山岳ツアーコースである。素晴らしいロケーションに恵まれた柳又谷源頭カール、豪快な雪倉岳東面のロングダウンヒルに、雪中の温泉も楽しむ事が出来る。また、快適な山小屋の設備も整っているため、登山というよりは旅行の気分で(少しキツイが)、森林限界を越えた高山の山岳滑降を楽しめるのも魅力である。

【5月1日】

  • 下山予定地の栂池高原に車を置き、タクシーで猿倉へ向かう。猿倉はゴールデンウィークなのに雪も少ないが、そのかわり人も少ない。初日は殆ど登りのみ高度差1700mの登高となる。後日の楽しいダウンヒルのために、位置エネルギーを蓄える初日の試練である。焦らずゆっくり登ることにする。
  • 白馬尻までは林道を進み、ここからは氷河のような大雪渓を進む。風が無く日差しが強いため真夏のような暑さとなる。アルペン的景観が単調な登高を癒してくれるが、それでも白馬岳までは長い。岩室の辺りからは斜度が急になり、スキーを背負いアイゼンを装着しストックをピッケルに持ち替える。夏と冬が同居する春山という例えの通り、さっきまでの暑さが嘘のように寒くなってきた。やがて大きく北へ向きを変えるようになると斜度が緩くなり、稜線も近くなる。
  • 白馬岳山頂からは、360度の素晴らしい展望で、槍 穂連峰から立山連峰、頸城の山々まで見渡せる。これ程有名な山なのに、他に誰もいないため貸し切りで展望を楽しむことが出来た。
  • 小屋に入ると豚汁のサービスがあり、空いているため旅館のような特別室を割り当てられる。とても北アルプスの稜線にいるとは思えない。旭岳に沈む夕日を見ながら夕食を取り1日目は終わる。

【5月2日】

  •  ご来光を見た後、昨日に引き続き快晴の空の下、蓮華温泉に向けて出発する。安Dさん、F墳さんにとっては、アルプスの表舞台での華々しいデビュー戦である。白馬山荘の前でスキーを付け、劔岳を正面に見ながら滑り出す。雪質は程よいアイスバーンでスキーのエッジ感が気持ち良い。旭岳との鞍部近くまで滑り、ここからは北へ向きを変え柳又カールの真ん中を滑降する。白馬岳、旭岳に囲まれたこの雪の回廊は、溜息の出るほどの素晴らしい山岳美で、まるで絵画の中を滑っているようである。また雪質も良く、斜度も適度なのでロングターンもショートターンも思いのままに自分達だけのシュプールを刻む。下部はトラバース気味に長池まで下り、鉢ノ鞍部へ登り返す。
  • 稜線に出ると、さっきまでの無風が嘘のような強風が吹き荒れている。鉢ヶ岳の東側をトラバースして雪倉岳を目指す。振り返ると白馬岳からの滑降コースが見渡せる。・雪倉岳からの展望を楽しんだ後、遥か眼下、蓮華温泉の赤い屋根目指して再び滑り出す。山頂から瀬戸ノ渡しまでは、僅か3km弱の距離で1230mもの高度を下げる豪快な滑降コースで、上部の大斜面と下部の急峻なルンゼによって構成されている。
  • 滑り出し頂稜部の緩斜面は、良く締まったザラメ雪となっており気持ち良く弧を描くと、斜度がやや強まり、果てしない大スロープとなる。と同時に雪は重い悪雪に変わる。ショートターンでは、ふだんの運動不足がひびいて足が重くジャンプターンが上手くいかない。しかし、こういう大きな斜面は、姿勢を低くしてスピードに乗ったロングターンでグングン滑るのに限る。雪も軟らかく、とにかく広いので簡単に限界スピードに達してしまう。大スロープの滑降は、ただ自由だけがあるのみで、細かい事などどうでもよい気分になってしまうので不思議である。
  • 大斜面の滑降に酔いしれた後、斜度は更に増し、急峻なルンゼに突入する。二股となっている辺りで斜度は40度を越えてくる。重い足を振り回しながら尚も滑り続ける。やがて斜度が緩くなり谷がS字状にカーブすると先が無くなった。雪倉ノ滝である。少し登り返しスキーを脱いで小尾根を越え、滝の左岸側のルンゼに入る。ここにも急な大斜面があり、瀬戸川はすぐ真下である。シュルンドに注意して瀬戸川へ滑り降り、蓮華温泉ロッジが架設した丸木橋を渡る。去年の今頃は雪に覆われていた瀬戸川も今年はスノーブリッジも無い程雪が少ない。
  • ここから蓮華温泉までは、まだまだアップダウンがある。滝見尾根を越えて兵馬ノ平に滑り、更に登り返す。やがて赤い屋根が見えるとまもなく、今の時期の交通手段はスキーのみという蓮華温泉に到着する。
  • まだ日が高く、他の登山者もまだ到着していないようである。例の如く早々露天風呂へむかう。ロッジの裏を10分程登ると仙気ノ湯がある。人が入ってないため50℃の温度計の針は振り切れており、熱くてとても入れない。おじさんが一人、源泉からの管を外へ出して冷まそうとしているがなかなか冷めない。仕方なくもう少し上にある薬師ノ湯へ行ってみると、今度は生温かい。しかし熱湯よりは良いだろうと思って入ったが、やはり冷たい。再び仙気ノ湯に行くと、ちょうど良い湯加減になっていた。日焼けの跡が痛いが極楽気分を味わう。
  • この日、白馬岳から蓮華温泉にむかったパーティーは我々の他に、雪倉北面経由の男性2人組のパーティーがあったが、なかなか姿を現さない。心配していたところ、日が暮れてから到着した。そのパーティーは、板が折れたり道に迷ったり渡渉したりで大変だったようである。やはり第1級のルートという事で、気が引き締まる思いがした。

【5月3日】

  • 3日目は、天狗原を越えて栂池へ下山の予定であったが、天気予報は雨と報じていた事もあり、殆ど下りのみの平岩コースに変更する。
  • 夜が明けるとまだ雨は降っていない。朝食までの時間を朝風呂で過ごし、朝食後にすぐに行動を開始する。コースは雪が少ないため、全て林道どうしに下らなければならない。この林道は殆ど傾斜が無く、雪が途切れるたびにスキーを外したり付けたりしなければならず効率が悪い。ただ、予報では雨だったのに、次第に雲間から薄日が差してきたのが救いである。
  • 白池を通り抜け、杉ノ平までは林道に傾斜があってスキーが良く滑る。淡い春の日差しの中、風の様に最後の滑りを楽しむ。やがて雪が完全に途切れ、スキーを担いで歩く事30分、木地屋に到着しツアーは終了する。
  • 木地屋でタクシーを呼んでもらい、途中、蒲原沢の土石災害現場やここ数年の水害の爪痕を見ながら栂池高原に行、車を回収する。・3日間、天候に恵まれ、アルプスの滑降を思う存分楽しむ事ができた。メンバーの皆さん、お疲れさまでした。(記:ケンちゃん)

写真

柳又谷源頭
旭岳北面
旭岳北面